研究・実績

 

がん患者に対するがん化学療法の種類と食事嗜好についての後方視的検討

肺癌における化学療法の治療効果に関わる臨床的因子の同定を目指した後方視的研究

COPD の増悪に関わる臨床的因子の同定を目指した後方視的研究

進展型小細胞肺癌の2次治療薬としてのアムルビシンの効果と安全性に関する後ろ向き観察研究

既治療進展型小細胞肺癌を対象としたパクリタキセル・ナブパクリタキセルの効果・安全性に関する後ろ向き観察研究

オシメルチニブ治療後のEGFR変異陽性肺がん患者を対象とした免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に関わる臨床的因子の同定を目指した後方視的研究

 

基礎・橋渡し研究について

当科では、呼吸器疾患を研究対象に、その本態解明および新規診断・治療法開発を目指した基礎・橋渡し研究を精力的に進めています。また国内外の研究施設との共同研究を行っております。

当科でこれまでに
取り組んできた研究内容

1) EGFR遺伝子変異陽性肺がんを対象にした治療抵抗性に関する研究

現在、我が国の肺がん患者の約25%はEGFRと呼ばれる遺伝子が変異し異常に活性化しています。そのような患者さんに対する治療薬として、がん分子標的薬であるEGFR阻害薬が開発されました。今ではイレッサをはじめとして複数のEGFR阻害薬が臨床で使用されています。このEGFR阻害薬による治療は高い確率で奏効するものの、一部のがん細胞は残存し、薬剤耐性を獲得することが臨床において大きな問題となっています。これまでに我々を含めた多くの研究グループから、EGFR阻害薬に耐性化する原因を見つけ出し、その研究成果を基に耐性化したがん細胞にも効く新世代治療薬が開発されてきました。しかし、新世代薬にも再び耐性が起こり、新薬開発とその耐性化は現在の大きな臨床的課題の一つです。
最近の基礎研究から、がん治療における「治療抵抗性細胞」の存在が提唱され、がん研究の領域において大きな注目を集めています。この治療抵抗性細胞は治療開始時から薬の効果が低く、薬による細胞死を免れることが知られています。

我々の研究グループは、これまでに金沢大学や長崎大学、南方医科大学(中国)との共同研究により、EGFR阻害薬に対する治療抵抗性細胞の原因として、AXL蛋白がEGFRやHER3と結合することで活性化し、SPRY4-AXLによるnegative feedbackを介して、生存シグナルを維持していることを明らかにしました。さらに、AXL高発現を有する肺がんでは低発現肺がんに比べ、EGFR阻害薬の感受性が低下し、これらはAXL阻害によりEGFR阻害薬の治療効果を高めることがわかりました。(Nat Commun 2019;10(1):259)

さらに、我々はマウス動物実験モデルを用いて、新規開発中のAXL阻害薬をEGFR阻害薬と併用することで、がん細胞をほぼ死滅させ、再発を著明に遅らせることを示しました。これらの2剤を最初から併用した方が、EGFR阻害薬の耐性獲得後に併用した時と比較して、より高い治療効果が得られることを発見しました。(Clin Cancer Res 2020;26(9):2244-2256)

一方、AXL低発現肺がんについては、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)のタンパク質量を増やすことにより、EGFR阻害薬に対する治療抵抗性を獲得し、生き延びることを明らかにしました。また、治療当初からIGF-1R分子を短期間抑えることでEGFR阻害薬の治療効果が増強し、根治あるいは再発までの期間を劇的に伸ばすことを発見しました。(Nat Commun 2020;11(1):4607)

(図)EGFR阻害薬とAXL阻害薬の併用治療効果

(図)EGFR阻害薬とAXL阻害薬の併用治療効果

図)AXLシグナル伝達による肺がん分子標的薬の治療抵抗性メカニズム

(図)AXLシグナル伝達による肺がん分子標的薬の治療抵抗性メカニズム

以上より、AXLやIGF-1R分子を初期から抑えることで肺がんに対する治療効果が改善し、新たな治療法として期待されています。現在、我々は、これらの研究成果を臨床に還元する取り組みにも取り組んでいます。 (文責 山田)

2) 喫煙による薬剤感受性に関する研究

喫煙は、肺がんの発症リスクを高めるだけでなく、抗がん剤の効果を減弱させることが知られています。タバコの主要成分の一つであるニコチンが、肺がん細胞に発現するニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor:nAchR)に結合することで、がんの増殖を促す信号が強まることが原因の一つであると考えられています。

我々の研究グループでは、nAchRの中でも肺がんとの関連が強いα1サブユニットに焦点を絞り検討を重ねてきました。これまでの研究で、α1nAchRがEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの細胞株に発現していること、マウスを用いた動物実験モデルにおいてニコチンがα1nAchRに作用することでがんの増殖を促す信号が活性化され、第一世代EGFR阻害薬であるerlotinibの効果が減弱することを報告しました。

さらに、我々はヒト血清を用いて、より生体に近い条件下においても、喫煙がerlotinibだけでなく、第二、三世代EGFR阻害薬であるafatinibとosimertinibの治療効果を阻害することを報告しました。(Cancers 2019; 11(3): 282) (文責 今林)

(図)ヒト血清を用いた喫煙のEGFR阻害薬の治療阻害効果

(図)ヒト血清を用いた喫煙のEGFR阻害薬の治療阻害効果

3) がん免疫治療に関する研究

現在、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測因子として、腫瘍組織のPD-L1の発現率を免疫染色で調べることが保険診療でも認められています。しかし、PD-L1の発現が動的であることなどから、必ずしもPD-L1の発現率と治療効果が一致しません。そのため、PD-L1の発現メカニズムについて詳しく調べ、治療効果を予測したり高めたりする研究に取り組んでいます。

(図)腫瘍微小環境におけるIFNβ・IFNγ とPD-L1の発現について

(図)腫瘍微小環境におけるIFNβ・IFNγ とPD-L1の発現について

腫瘍微小環境において、浸潤したリンパ球により分泌されるインターフェロン(以下IFN)γが腫瘍細胞のPD-L1の発現を上昇させることはよく知られています。腫瘍微小環境では、Immunogenic Cell DeathによりIFNβが腫瘍細胞や樹状細胞より分泌され、抗腫瘍免疫の開始に必要なCD4 T細胞への抗原提示やCD8 T細胞へのcross-presentationといった重要な役割を担っていますが、腫瘍免疫におけるIFNβの役割についてはまだよく分かっていません。

本学免疫学教室の松田教授、岸田准教授のご指導の下、肺がんにおいてIFNβもPD-L1の発現を上昇させること、IFNβとIFNγを同時に投与するとそれぞれ単独よりPD-L1の発現を上昇させることなどを明らかにしました。また、IFNβによるPD-L1上昇には、JAK/STAT経路が必須で、その下流のシグナル伝達はIRF9依存経路と非依存経路の両方であることを明らかにしました。(BBRC 2018;507(1-4):330-336) 実際に肺がん細胞を移植したマウスにIFNβを投与したり、ウイルス感染により血中のIFNβを上昇させたりすると、肺がん細胞のPD-L1の発現が上昇することをin vivoでも確認しています。

(図)マウス肺がん細胞をIFNβ やIFNγ で刺激すると、細胞表面のPD-L1の発現が上昇する。

(図)マウス肺がん細胞をIFNβ やIFNγ で刺激すると、細胞表面のPD-L1の発現が上昇する。

今後、呼吸器内科学教室にて、血液中のIFN濃度と免疫チェックポイント阻害薬の効果の関係を調べるなど、臨床にも還元するべく研究を進めていきたいと考えております。(文責 森本)

4) がん微小環境(間質圧の上昇)ががん発生に及ぼす影響に関する研究

慢性炎症ががんの発生と関連することはよく知られており、炎症に伴う免疫応答やサイトカインががんの誘因となることがその主な原因と考えられてきました。一方、慢性炎症や肺がんを含めたほとんどのがん組織では間質圧が上昇していることが知られていますが、この物理的な圧の上昇ががんの発生・促進に及ぼす影響はよく分かっていませんでした。そこで我々は培養上皮細胞を用いて圧が上皮に及ぼす影響を検討し、基底側(間質側)からの圧が上皮の重層化・極性異常・増殖の亢進・アポトーシスの抑制などを引き起こすことを見出しました。

(図)静水圧が上皮細胞に及ぼす影響(走査電子顕微鏡像)

(図)静水圧が上皮細胞に及ぼす影響(走査電子顕微鏡像)

同様の極性異常を伴う重層化はK-rasを強制発現した培養細胞やin vivoのがん組織でも認められることから上記の変化はがんと共通する形質と考えられ、慢性炎症やがん組織でみられる間質圧の上昇ががんの発生・促進に寄与していることが示唆されます。

(図)間質圧の上昇とがん発生についての本研究仮説

(図)間質圧の上昇とがん発生についての本研究仮説

現在、上皮細胞がどのようにして圧の上昇を感知して上記の細胞応答が引き起こされるのか検討をすすめており、これまでの研究結果から細胞間隙で圧のバリアーとして機能するタイトジャンクションがその機序に関与することが示唆されてきています。
今後さらに間質圧の上昇ががんの発生・促進に寄与するメカニズムの解明を進めることで、将来的に新たな角度から肺がんの治療法を開拓することにつながることを目指しています。 (文責 徳田)

5) 肺扁平上皮がんを対象とした新規治療法に関する研究

非小細胞肺がんの20-30%を占める扁平上皮がんにおいては有効な分子標的治療がなく、新たな有効な治療法の開発が望まれます。HDAC阻害剤は、エピジェネティックに遺伝子に作用し様々な遺伝子発現に影響する薬剤であり、 抗がん剤としても期待されている薬剤です。血液疾患に対する効果が確認されていますが、肺がんに対してはこれまで行われた臨床試験では有効で安全とされる治療法は確認されていません。

我々は、肺扁平上皮がんに対するHDAC阻害剤による新規併用療法の開発を目的として、実臨床で使用できる抗がん剤と、当院の創薬センターの酒井センター長が創薬された強力なHDAC 阻害作用を持つHDAC阻害剤OBP-801を用いて、効果のある併用療法を検証しました。結果、OBP-801とアムルビシン(AMR)の併用投与は, 相乗的にヒト肺扁平上皮がん細胞の細胞増殖を阻害することを発見しました (INTERNATIONAL JOURNAL OF ONCOLOGY 56; 848-856, 2020)。

OBP-801とAMRの併用投与は、JNK/p38 MAPK非依存的でミトコンドリア内のASK1依存的と考えられるアポトーシスを劇的に誘導し、また、AMRによるROS産生促進、OBP-801によるTXNIPの発現増加によるミトコンドリア内のASK1からのTrx2の解離がASK1を活性化することで強いアポトーシスが誘導されることが示唆されました。

さらに我々は、マウス動物実験モデルにおいてもOBP-801とAMRの併用治療は各単剤治療と比較して有意に腫瘍の成長を抑制することを確認しました。

(図)OBP-801とアムルビシンの併用効果メカニズム

(図)OBP-801とアムルビシンの併用効果メカニズム

(図)マウス動物実験モデルにおけるOBP-801とアムルビシンの併用効果

(図)マウス動物実験モデルにおける
OBP-801とアムルビシンの併用効果

以上より、OBP-801とアムルビシンの併用治療は肺扁平上皮がんに対する新規併用療法として有望な治療選択肢の一つとなる可能性が期待されます。(文責 千原)

臨床研究について

2016年より当科を中心に多施設共同臨床研究グループ(SPIRALグループ)を立ち上げ、本学CRO機関とも協力して積極的に臨床研究を進めています。同グループには九州から関東まで約60施設のがん診療に関する基幹病院に参加していただいており、現在合計で約20の介入試験を実施しております。定期的な研究グループの会合も実施しており、円滑かつ迅速な試験実施を推進しています。

また、医師の自主的な臨床研究だけでなく、企業より資金を調達して複数の医師主導治験を立案、実施も行っています。これにより、現在は適応外とされている患者にも新規薬剤の適応を拡大して恩恵をもたらしたいと考えています。

一方、臨床試験の実施については臨床研究法の施行などを受けて、医師主導での立案実施が困難な状況に置かれてきています。したがって、今後は質の高い診療・研究の実現や、特に高い資源投入が要求される開発後期の臨床試験に関して運用の適正化が求められる状況です。

例えば臨床試験・治験で情報を収集すると極めて高額な費用が必要である状況において、質の高いエビデンスとして活用できるデータが示せる信頼性の高いレジストリを整備し、欧米と同様、薬事分野をはじめとして、リアルワールドデータの利活用を促進することが重要であると考えます。そのような方向性での臨床研究についてもシステムの構築についてなどの研究を進める予定です。(文責 内野)

臨床研究、臨床研究法の対象:特定臨床研究、治験

当科でこれまでに取り組んできた研究内容

1) がん悪液質に関する研究~NEXTAC研究について~

進行期がん患者さんにとってがん悪液質はQOLを下げ、治療抵抗性をもたらし、予後を縮めうる非常に厄介な病態です。「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されており、その病態には定義の通り様々ながんに関連する因子が複雑に絡み合っています。がん悪液質は進行期がん患者さんの8割に認められ、肺がんでも死因の5割を占めるといわれています。にもかかわらず、その病態の複雑性からがん悪液質に対する有効な治療法はいまだに確立していません。

がん悪液質ハンドブック( http://jascc.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/cachexia_handbook-4.pdf )より

がん悪液質ハンドブック( http://jascc.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/cachexia_handbook-4.pdf )より

これに対し2016年8月より当院を含む国内4施設(京都府立医科大学附属病院、国立がん研究センター東病院、静岡県立静岡がんセンター、新潟県立がんセンター新潟病院)において、悪液質リスクの高い高齢進行がん患者に対して、初回化学療法導入時より栄養と運動を組み合わせた複合介入プログラム(The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer(NEXTAC) program)の開発を目的に臨床試験を実施しています。

過去の試験では患者さんのADLの低下などによりプログラムが持続できず十分な効果が得られないなどの結果でしたが、本プログラムはすでに第Ⅰ相試験(NEXTAC-ONE)の結果は出ており、高齢進行期がん患者においても安全に継続可能なことが示されました。 (Naito T, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019 ;10(1): 73-83.)

現在はその効果をみるべく第Ⅱ相試験(NEXTAC-TWO)が進んでいます。本プログラムの効果が確認されれば、悪液質に対する介入法としては初めて有効性、安全性、持続可能性が示された治療法が確立されることと期待されます。(文責 田中)

2) EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対する、Dacomitinib治療の皮膚障害予防に関する研究

EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対しては、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が有効です。第二世代EGFR-TKIであるDacomitinibは、第一世代EGFR-TKIであるGefitinibと比較し、無増悪生存期間を有意に延長し、その有効性が認められています。しかし、副作用である皮膚障害が治療上の課題であり、現在本学を中心に皮膚障害の予防を目的とした臨床試験を行っております。

治療開始時よりステロイド外用薬、保湿剤(ヘパリン類似物質)、日焼け止め、ミノサイクリン内服を併用し、皮膚障害の軽減効果を検討しております。本試験を通して、有効な薬剤を、より副作用を軽減した形で使えるよう臨床へフィードバックすることを目指しております。(Iwasaku M, et al. Transl Lung Cancer Res. 2019;8(4):519-523)。(文責 岩破)

3) 肺がん疑い患者における気管支鏡検査前後の不安・抑うつ状態に対するミルタザピン治療効果の検討

がん患者にはうつ症状が多いこと、うつ症状によりQOLのみならず疾患予後が悪化することが既に知られています。2017-18年、当科で肺がん精査目的に気管支鏡検査を受けて頂いた患者さまを対象に、検査前にHADS1・FACT-L2による抑うつ評価を行い、抑うつ症状を認めた方にはmirtazapineによる治療介入を行う前向き介入研究を行いました。

肺がん確定前の検査の時から約半数の患者さんに抑うつ症状を認めること、HADS scoreに影響する症状として咳(p=0.002)、呼吸困難感(p=0.001)が挙げられた。また比較的早期に血中濃度が安定するミルタザピンは診断前抑うつ症状の緩和に効果がある (HADS 変化2.8 points; mean) ことが示されました。(Kaneko Y, et al. Intern Med. 2020; 59: 1605-1610)(文責 金子)

1 HADS : Hospital Anxiety and Depression Scale
2 FACT-L : Functional Assessment of Cancer Therapy – Lung

図:抑うつ症状の程度を示すHADS scoreに影響する要因
図:抑うつ症状の程度を示すHADS scoreに影響する要因

図:抑うつ症状の程度を示すHADS scoreに影響する要因

4) EGFR変異陽性非小細胞肺がんにおけるEGFR-TKIによる腫瘍縮小率に関する検討

EGFR変異陽性非小細胞肺がん患者の約半数は第1/2世代EGFR-TKI治療中にT790M二次的変異によるEGFR-TKIへの耐性がみられますが、これは第3世代EGFR-TKIによって克服されることが報告されております。しかし、T790M二次的変異を引き起こす臨床的な背景因子やT790M二次的変異による耐性後の第3世代EGFR-TKIの効果予測因子についてはまだ十分明らかではありません。

我々は第1/2世代EGFR-TKI耐性後にT790M変異の有無を評価した78例のEGFR変異陽性非小細胞肺がん患者を対象に第1/2世代EGFR-TKIによる抗腫瘍効果に関して後ろ向きに検討したところ、T790M変異の検出および第3世代EGFR-TKIの効果に関して第1/2世代EGFR-TKIの抗腫瘍効果と有意に相関があること(p = 0.001, p = 0.021)を明らかにしました。以上より、同じEGFR変異陽性非小細胞肺がん患者でも、患者ごとにEGFRの依存度が異なり、これがEGFR-TKIへの効果や耐性機序に影響がしている可能性があることを報告しました(Yoshimura A, et al. BMC Cancer. 2018;18(1):1241. & Yoshimura A, et al. Cancers. 2019;11(3):365.)。(文責 吉村)

(図)T790M変異の有無ごとにおける第1/2世代EGFR-TKIの腫瘍縮小率

(図)T790M変異の有無ごとにおける第1/2世代EGFR-TKIの腫瘍縮小率

(図)第1/2世代EGFR-TKIの奏効期間ごとにおける第3世代EGFR-TKIの無増悪生存期間

(図)第1/2世代EGFR-TKIの奏効期間ごとにおける
第3世代EGFR-TKIの無増悪生存期間

(図)EGFRの依存度の違いによるEGFR-TKIの効果や耐性機序に関する仮説

(図)EGFRの依存度の違いによる
EGFR-TKIの効果や耐性機序に関する仮説

5) EGFR変異陽性肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に関する検討

EGFR変異陽性肺がん患者では、免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)の治療効果が乏しいことが報告されています。しかし一部の症例では有効な治療効果を示します。我々は27例のEGFR変異陽性肺がん患者を対象にICIの治療効果に関連する因子について後ろ向きに検討したところ、Uncommon EGFR変異を有する症例では、ICI治療の奏効率が高く(p<0.01)、無増悪生存期間が延長していることがわかりました(p=0.014)。以上より、ICI治療効果の予測因子として、EGFR変異タイプが重要であることを報告しました(Yamada T, et al. Cancer Med. 2019;8(4):1521-1529)。(文責 山田)

(図) EGFR変異タイプ別のICI無増悪生存期間(N=27)

(図) EGFR変異タイプ別のICI無増悪生存期間(N=27)

6) サルコペニアが免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に与える影響

本研究は、京都府立医科大学附属病院にて二次治療以降に免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ及びペンブロリズマブ)を使用した進行期もしくは術後再発の非小細胞肺がん患者を対象とした後方視的研究です。適格基準を満たす38名の患者(男性26名 女性12名)を対象に免疫チェックポイント阻害薬投与前のCTを用いて大腰筋面積を測定、初診時よりも10%以上面積が減少した患者をサルコペニアと定義し、二群に分けました。

主要評価項目を無増悪生存期間とし、両群を比較したところ、サルコペニア群のほうが、非サルコペニア群よりも有意に短縮していました(中央値47日[95%CI:23–76] 対204日[95%CI:59 – NA] [p = 0.00186])。この結果より、サルコペニアは免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を減弱させている因子となっている可能性があることを報告しました。(Nishioka N, et al. J Clin Med. 2019;8(4):450.) (文責 西岡)

(図)無増悪生存期間(PFS)のKaplan-Meier曲線

(図)無増悪生存期間(PFS)のKaplan-Meier曲線

7) 非小細胞肺がんにおけるドセタキセル+ラムシルマブ併用療法の治療効果に関する検討

既治療進行非小細胞肺がん患者に対するドセタキセル+ラムシルマブ併用療法(以下、Doc.+Ram.)は有効な治療レジメンであることが報告されています。しかし、Doc.+Ram.の治療効果に関連する因子についてはまだ十分明らかではありません。我々はDoc.+Ram.が投与された135例の非小細胞肺がん患者を対象に後ろ向きに検討したところ、腫瘍内PD-L1染色性の程度は治療効果に影響を与えないこと(p = 0.444)、免疫治療を先に受けた症例では治療効果がより高いこと(p = 0.012)を明らかにしました。
以上より、現在は複合免疫治療が進行肺がんの1st line治療として汎用されていますが、本研究の結果より、再発後の2次治療としてのDoc.+Ram.が期待できることを報告しました(Yoshimura A, et al. Transl Lung Cancer Res. 2019;8(4):450-460.)。(文責 吉村)

(図)PD-L1発現別のDoc.+Ram.の無増悪生存期間

(図)PD-L1発現別のDoc.+Ram.の無増悪生存期間

(図)免疫チェックポイント阻害薬の投与タイミング別のDoc.+Ram.の無増悪生存期間

(図)免疫チェックポイント阻害薬の投与タイミング別の
Doc.+Ram.の無増悪生存期間

8) 複数の抗PD-L1抗体を用いた小細胞肺がんのPD-L1発現に関する後方視的検討

進行期小細胞肺がんに対しても免疫チェックポイント阻害薬の有効性が報告されております。その効果予測因子として腫瘍内PD-L1発現が注目されているが、抗PD-L1抗体の違いにより腫瘍内PD-L1発現性が異なることが報告されています。我々は44例の進行期小細胞肺がん患者を対象に後ろ向きに検討したところ、抗体間におけるPD-L1発現は類似していた、各種抗体による腫瘍内PD-L1発現はプラチナ併用化学療法の奏効割合と相関は示されなかったことを明らかにしました。以上より、小細胞肺がんのPD-L1染色性はいずれの抗PD-L1抗体を用いた免疫染色においても有意な差はみられなかったことを報告しました(Yoshimura A, et al. Lung Cancer. 2019;137:108-112.)。(文責 吉村)

(図)抗PD-L1抗体ごとの腫瘍内PD-L1発現

(図)抗PD-L1抗体ごとの腫瘍内PD-L1発現

受賞歴

当科の各方面での活躍が評価されました。

2020年度

吉村彰紘先生がKALC 2020 Merit Awards & Best Poster Presentation Awards受賞!!|2020年11月

KALC 2020にて吉村彰紘先生がMerit Awards & Best Poster Presentation Awards受賞しました!
コメント:大学院生の吉村です。
本年11月19-20日に韓国で開催された2020 Korean Association for Lung Cancer International Conference Virtualにて行ったポスター発表が、Merit Awards と Best Poster Presentation Awardsを受賞したとの連絡をいただきました。
今回はEGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するAXL発現とオシメルチニブの治療効果に関する後方視的検討について報告させていただきました。virtual開催のため、現地での発表はかなわなかったですが、このような賞を、しかもダブルで受賞させていただき、たいへん恐縮しております。
ご指導いただきました山田先生、髙山先生には多大なる感謝を申し上げます。今後とも引き続き、少しでも患者さんに貢献できるように研究を進めていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

山田忠明先生が公益財団法人武田科学振興財団 2020年度医学系研究継続助成(がん領域:基礎)に選定!!|2020年11月

公益財団法人武田科学振興財団 2020年度医学系研究継続助成(がん領域:基礎)に山田忠明先生が選ばれました!
コメント:病院准教授の山田です。
本財団の2020年度“医学系研究継続助成(がん領域:基礎)”に選定いただきましたので、ご報告いたします。今回は、一昨年に授与いただきました“医学系研究助成(がん領域:基礎)”の継続を申請した研究の中から、我々を含めた6課題が採択されました。我々が現在、精力的に取り組んでいる肺がんの治療抵抗性に関する研究に関する成果がご評価いただけたようでした。
今後も肺がん患者さんの新たな診断・治療法の開発に貢献できるよう、大学院生の先生方と質の高い橋渡し研究を進めてまいりたいと考えております。

谷村恵子先生が第61回日本肺癌学会学術集会 優秀論文賞受賞!!|2020年11月

第61回日本肺癌学会学術集会にて谷村恵子先生が優秀論文賞を受賞しました!
コメント:非小細胞肺がんにおける抗PD-1抗体の治療効果と免疫関連有害事象との関連についての論文で、優秀論文賞を頂きました。肺がんの免疫療法について多くの研究成果が発表されている中、このような賞を頂けたことは大変光栄であり、ご協力・ご指導頂きました先生方に深謝申し上げます。今後も新たな発見を報告できるよう、引き続き精進したいと思います。

大倉直子先生が第61回日本肺癌学会学術集会 肺癌学会若手奨励賞受賞!!|2020年11月

第61回日本肺癌学会学術集会にて大倉直子先生が肺癌学会若手奨励賞を受賞しました!
コメント:この度、日本肺癌学会若手奨励賞を受賞いたしました。山田先生を始め、ご指導頂いた先生方に深く感謝致します。これを励みに一層努力して参りたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。

山田忠明先生が第61回日本肺癌学会学術集会 日本肺癌学会篠井・河合賞受賞!!|2020年11月

第61回日本肺癌学会学術集会にて山田忠明先生が日本肺癌学会篠井・河合賞を受賞しました!
コメント:病院准教授の山田です。この度、日本肺癌学会篠井・河合賞を授与いただきました。これまでに取り組んできた肺癌研究の成果が高く評価いただき、光栄に感じております。本研究の題目は「肺がんの治療抵抗性因子の探索と根治を目指した新規治療法の開発」です。肺がん分子標的治療の初期に生じる治療抵抗性に注目した実験的研究を行い、その機構解明と新規治療法を明らかにしました。今後は、進行肺がん根治を目指したこれらの研究成果を臨床応用することで、肺がん診療に貢献したいと考えております。最後に髙山教授をはじめとする当教室の先生方のサポートに感謝申し上げます。

今林達哉先生が令和元年度医学研究国際化推進事業 論文賞 学長賞を受賞!!|2020年11月

令和元年度医学研究国際化推進事業にて今林達哉先生が学長賞を受賞しました!
コメント:末梢肺病変におけるクライオバイオプシーの論文で学長賞を頂きました。人生初めての受賞ですので、大変光栄に感じております。クライオバイオプシーのみならず、気管支鏡技術の発展、均てん化に貢献できるよう邁進して参ります。

西岡直哉先生が令和元年度医学研究国際化推進事業 論文賞 優秀賞を受賞!!|2020年11月

令和元年度医学研究国際化推進事業にて西岡直哉先生が優秀賞を受賞しました!
コメント:この度はこのような賞を頂戴し、たいへん光栄に思っております。本論文では、悪液質の存在が免疫治療に大きく影響を与えることを証明した内容となっており、今回の受賞は悪液質分野に皆様がご注目いただくようになった結果と考えております。癌患者の生活の質向上や治療を最大限高めるためにも、さらにこの疑問に対して追及していきたいと思います。

吉村彰紘先生が令和元年度医学研究国際化推進事業 論文賞 優良賞を受賞!!|2020年11月

令和元年度医学研究国際化推進事業にて吉村彰紘先生が優良賞を受賞しました!
※吉村先生は昨年の優秀賞に続いて2年連続の受賞となりました
コメント:本学の医学研究国際化推進事業として創設されました「論文賞」部門において、既治療進行非小細胞肺がん135例を対象としたドセタキセル+ラムシルマブによる治療効果に関する後ろ向き解析に関する論文で優良賞を受賞させていただきました。このような名誉ある賞を昨年に引き続き、受賞することができ、たいへん恐縮しております。ご指導いただきました山田先生、髙山先生には多大なる感謝を申し上げます。今後とも引き続き、少しでも患者さんに貢献できるように研究を進めていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

金子美子先生が京都府立医科大学令和元年度WLBみやこ賞を受賞!!|2020年11月

本学対象の論文募集にて金子美子先生が京都府立医科大学令和元年度WLBみやこ賞を受賞しました!
コメント:この度、令和元年度WLBみやこ賞を受賞させていただきました。対象論文は重症薬疹であるStevens-Johnson症候群に合併する閉塞性細気管支炎について検討しました報告です。(Respiratory complications of Stevens-Johnson syndrome (SJS): 3 cases of SJS-induced obstructive bronchiolitis Allergology International 69: 465-467, 2020) SJSは全身の皮膚粘膜に水泡とびらんを及ぼす重症薬疹で、一部の症例に閉塞性細気管支炎BOが示すことがしられていますが、稀少疾患のためその病態も実態も詳細不明です。当院で集約した3例を示し、多彩な病型や早期より肺移植の検討が必要な事などを論じました。じっくり臨床研究に取り組む姿勢や方向性をご指導いただきました当科の髙山教授、SJSの疾患理解をご指導いただきました眼科外園千恵先生に深く感謝申し上げます。
本研究は、SJS合併BOの全国実態調査(厚生労働科研)を担当させて頂くことに発展いたしました。
今後も微力ながら本テーマを進めてまいりたいと思います。

大倉直子先生が第24回日本がん分子標的治療学会学術集談会 優秀ポスター賞受賞!!|2020年10月

第24回日本がん分子標的治療学会学術集談会にて大倉直子先生が優秀ポスター賞を受賞しました!
コメント:この度、第24回日本がん分子標的治療学会学術集談会優秀ポスター賞を受賞致しました。
ご指導頂いた先生方に深く感謝致します。これからも精進してまいりたいと思います。
今後ともよろしくお願い致します。

森本健司先生が第24回日本がん分子標的治療学会学術集談会 優秀演題賞受賞!!|2020年10月

第24回日本がん分子標的治療学会学術集談会にて森本健司先生が優秀演題賞を受賞しました!
コメント:この度、第24回日本がん分子標的治療学会学術集会で優秀演題賞を頂きました。EGFR遺伝子肺癌への免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を後方視的に検討した報告になります。本研究に関して、髙山先生、山田先生をはじめ、御指導いただきました先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。今回の受賞を励みとして、今後もがんの研究を進めてまいります。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

菅佳史先生が第111回日本肺癌学会関西支部学術集会 優秀演題賞受賞!!|2020年2月

第111回日本肺癌学会関西支部学術集会にて菅佳史先生が優秀演題賞を受賞しました!
コメント:専攻医一年目の菅佳史です。
この度は第111回日本肺癌学会関西支部学術集会において発表させて頂いた「当院における進行非小細胞肺癌の複合免疫療法に関する後方視的検討」が優秀演題賞を受賞致しました。
本発表は当院における複合免疫療法の有効性、忍容性、効果予測因子を後方視的に検討したものです。本学会では活発な質疑応答が行われており、大変刺激を受け貴重な経験をさせて頂きました。この経験を糧にさらに精進して参ります。

2019年度

吉村彰紘先生が平成30年度医学研究国際化推進事業「論文賞」優秀賞受賞!!|2019年10月

平成30年度医学研究国際化推進事業にて吉村彰紘先生が「論文賞」優秀賞を受賞しました!
コメント:平成30年度より本学の医学研究国際化推進事業として創設されました「論文賞」部門において、高齢者非小細胞肺癌に対するS-1/PTX併用化学療法の有効性に関する論文で優秀賞を受賞させていただきました。この度はこのような賞をいただき、たいへん恐縮しております。今後とも引き続き、少しでも患者さんに貢献できるように研究を進めていきたいと思います。

山田忠明先生が公益信託 癌臨床研究助成基金交付者に選定!!|2019年9月

公益信託 癌臨床研究助成基金交付者に山田忠明先生が選ばれました!
コメント:この度、「小細胞肺がんの腫瘍内PD-L1発現に関する最適診断法の開発」の題目にて、癌臨床研究助成基金の研究助成を授与いただきました。現在、小細胞肺がんについても免疫複合治療が保険承認されていますが、有用な予測因子は確立しておりません。いただいた研究費を大切に使わせていただき、臨床研究を進めていきたいと考えております。

山田忠明先生が日本呼吸器学会International Session Award受賞!!|2019年4月

日本呼吸器学会にて山田忠明先生がInternational Session Award受賞しました!
コメント:本年4月に東京で開催された第59回呼吸器学会学術講演会にて行った口演発表が、International Session Awardを受賞したとの連絡をいただきました。今回の選考基準は、国際委員会による発表内容に関する査読結果 と当日発表の座長の先生による採点結果の総合評価により審査されたとのことでした。つたない英語での発表でしたので、思いもかけずこのような賞をいただき、たいへん恐縮しております。
当科では、呼吸器疾患に関わる臨床試験や臨床研究の他、大学院生の先生方と共に患者さんに還元できうる成果を得るべく、基礎研究についても精力的に研究活動を続けております。

吉村彰紘先生が青蓮賞授賞式および受賞記念講演会で青蓮賞を受賞!!|2019年3月

青蓮賞授賞式および受賞記念講演会にて吉村彰紘先生が青蓮賞を受賞しました!
コメント:第29回京都府立医科大学学友会青蓮賞に選出されまして、2019年3月1日に執り行われました青蓮賞授賞式および受賞記念講演会で青蓮賞を受賞させていただきました。この度は大変名誉ある賞を受賞することができ、ご協力およびご指導いただきました先生方には大変感謝申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

金子美子先生が難病医学研究財団医学研究奨励助成金交付者に選定!!|2019年2月

難病医学研究財団医学研究奨励助成金交付者に金子美子先生が選ばれました!
コメント:本財団の平成30年度医学研究奨励助成金に選んでいただき1月16日に帝国ホテルでの授賞式に参加しました。今回は、Stevens-Johnson症候群 (SJS)呼吸器合併症の実数調査と診療科横断的レジストリの構築を目指して、皮膚科・眼科と共同で呼吸器併存症の実態調査を行う臨床研究に対する助成です。SJS呼吸器合併閉塞性細気管支炎は慢性呼吸不全により晩期死亡の主要要因となりますが、稀少疾患故その実態は私ども呼吸器内科医でもほとんど認知できておりません。本助成を頂き、全国実態調査と内科側への疾患啓蒙を進めたいと思います。

山田忠明先生が臨床薬理研究振興財団 研究奨励金交付 財団賞を受賞!!|2019年1月

臨床薬理研究振興財団より山田忠明先生が研究奨励金交付者に選ばれました!

コメント:病院准教授の山田です。本財団の平成30年度研究奨励金交付者に選んでいただき、1月8日に本学において「贈呈証書」を授与されましたのでご報告いたします。
今回は、我々が肺がんの基礎研究で見いだした研究成果を元に、現在、多施設共同研究として行っている前向き観察研究に関する内容がご評価いただけました。将来的に肺がん患者さんの新たな診断・治療法の開発に貢献できるよう今後も臨床研究を精力的に進めてまいりたいと考えております。

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